● 2009年の こみみ ●
ユリアヌスと葉っぱの精神 (2009.12.24.) by O2先生
「重い・・・」本 (2009.12.11.)
作品に励まされてます… (2009.11.24.)
「会議は苦手」 (2009.11.11.) by T先生
改正します! (2009.10.28.)
相模湖を楽しもう (2009.10.14) by A先生
10年前の今日・・・ (2009.09.30.)
インフルエンザに関する本と特集記事 (2009.07.03.)
筆一本の至芸 (2009.06.17.) by O2先生
「グイン・サーガ」 (2009.06.03.)
甲斐善光寺の「鳴き龍」 (2009.05.20.)
スーザン・ボイルを知っているかい? (2009.05.09.) by A先生
わたしを離さないで (2009.04.30) by T先生
コトバ (2009.03.27)
今日はなんの日? (2009.03.11.)
音楽家と病気(9) 医学と音楽 −医師ベルリオーズと麻薬− (2009.02.25.) by K先生
裁判員制度が始まりますね。 (2009.02.17.)
変わった食べ物 (2009.01.28.) by O2先生
『変な学術研究』後日譚 (2009.1.14.)
最新へ戻る
ユリアヌスと葉っぱの精神 (2009.12.24.) by O2先生
前号の「こみみ」の“「重い・・・」本”というタイトルから、内容とは全く無関係ながらも思わず
連想してしまった短篇小説がある。ルターが宗教改革の火の手をあげた頃のこと、ロッテルダムの街
に住むある学者が行きずりの古籍商から悪魔について書かれた古写本を手に入れた。この本が夜ごとに
重くなってはひっくり返り騒動を引き起こす。書斎は床が砕け壁にも亀裂が入る始末で、地下室に
置いても床が沈み始めて建物も崩壊寸前の危機に。写字生たちも困り果てる中、学者先生に白羽
の矢を立てられたのは何と少々知能の低い女中。この世が天国だと思っているから死後に天国に行け
なくても十分満足だというこの女中があっけなく悪魔の本を始末する、といったお話(文春文庫、
「風の琴、二十四の絵の物語」所収、「傲り」)。
この短篇の作者、辻邦生さんが世を去ってから早くも十年が経つ。朝日新聞の日曜版に連載されて
いた水村美苗さんとの往復書翰「手紙、栞を添えて」が前年に刊行されたばかりで、畢生の大作と
なってしまった「西行花伝」(新潮社)に続く、定家を主人公にするという作品を読むのを心待ちにして
いた愛読者にとってはあまりにも突然の訃報であった。顧みれば修士課程2年の時、大学生協の書籍部で
「背教者ユリアヌス」を手に取ったのがこの作家との邂逅であった。読み始めたら止まらなくなり、
実験の合間に研究室をこっそり抜け出して大学近くの喫茶店に入り珈琲一杯と名物のココナッツ
マドレーヌでねばりながら読んだのを憶えている。天網恢恢疎にして漏らさず、とはよく言ったもので、
偶然通りかかった(或いは、そちらもサボりに来たところだったのか?)研究室の某先輩に目撃
されてしまったらしい。お店の外から何度も声を掛けて呉れたそうだが、文庫本から顔を上げさえ
しなかったという。あれだけ声の通る人に呼びかけられても全く気が付かなかったのだから余程夢中に
なって読んでいたのであろう。以来、「嵯峨野明月記」、「ある生涯の七つの場所」(いずれも中公文庫刊)
など、再読、再々読した作品は数知れない。いずれも読み応えのあるものだが、どの作品にも地上の
現実と美との相克が描かれており、世界は美に満ち溢れており現実に対して一見無力な存在のように
見える美こそが過酷さも含めた現実のすべてを包み込んで支えているのだ、という辻さんの確固たる
信念が通奏低音として鳴り響いている。
閑話休題。以前紹介した北村薫さんの「詩歌の待ち伏せ」という作品を読んでいたら、彩色こそ
施されていないものの非常に繊細で美しい木の葉の絵がちりばめられているのが目に留まった。
つい最近、その挿絵を担当された群馬直美さんの「木の葉の美術館」(世界文化社刊)という画文集を
手に入れた。添えられた軽妙なエッセーを読むのも楽しいが、何と言っても写真と見まがうばかりの細密な
テンペラ画によって描かれた数々の木の葉は圧倒的な迫力で、ページをめくるだけで思わず息をのんで
しまう。紅葉もあれば若葉もあり、虫食いもそのままに原寸大で描かれている。群馬さんの木の葉の絵は
インターネットでも楽しむことが出来るので、「こみみ」の読者の皆様にも是非お裾分けしたい。
興味をお持ちの方は下記のURLをご覧頂きたい。
http://www.wood.jp/konoha/
その中で、「葉っぱの精神」と題するエッセーには、群馬さんが木の葉の絵を描くようになった経緯が
綴られている。
http://www.wood.jp/konoha/p73.htm
これを読んでみると、表現方法に違いこそあれ辻邦生さんとほぼ同じことを語っているように思えて
ならない。
文学でも絵画や音楽でも、はたまた自然そのものでも、美しいものはみな、殺伐とした日常に疲弊
した人間に活力を与えてくれる。つかの間の冬休み、美に触れて英気を養いたいものである。
最新へ戻る 2009年の目次へ戻る
「重い・・・」本 (2009.12.11.)
重いテーマの本はとかく敬遠されがちです。かくいう私もそう。内容はもちろん物理的に
重い本も、手にとることをためらいますね。それなのに、読み始めたらやめられなくなって
しまう本もあります。そんな本をほんの少しでも読まないのは、もったいない! だまされた
と思ってページをめくってほしい本があります。
「あの戦争から遠く離れて - 私につながる歴史をたどる旅」
今年NHKで、「遥かなる絆」というタイトルでドラマ化されたので、ご覧になった方もいる
でしょう。私がこの本を手にとったきっかけは、あまりにもヨコシマな動機でした。
贔屓にしている俳優さんの出身地に著者が留学していたから・・・。
でも、読み始めたらとまらなくなりました。まだ読んでいない人みんなに、ぱらぱらでも
いいからページをめくってみて、と伝えたくなりました。
著者のお父様はいわゆる残留孤児です。でも著者は両親とも日本人で、日本で生まれ
育ったごく普通の日本人でもあります。いまの私たちにはあまりぴんときませんが、著者の
きょうだい以外に、このような境遇に生まれた方は聞いたことがないそうです。
お父様は日中国交正常化前に、独力で帰国を果たされました。この本では、お父様の
半生と帰国に至るてん末だけでなく、著者が実際にお父様の故郷を訪ねた様子や、自身の
留学経験についても書かれており、飽きるどころか、次々とページをめくってしまいます。
特に私がお薦めしたい理由は、著者の年齢が学生の皆さんと比較的近いこと。
1976年生まれの方が、戦争の時代について自らの経験とともに語るのは、あまりない
ことだと思います。年が近い分、著者が感じたことも、身近に感じられるのではないでしょうか。
この本では、ちょっと昔の中国の暮らしを知ることもできますし、親子の愛情の話としても
読むことができます。
考えてみてください。敵国の子どもを自分の子どもとして、それも深い愛情をもって育てる
ことができるでしょうか?
さて、図書館にあるDVDにも、あまり心惹かれない重いテーマのものがいくつかあります。
例えば、「NHKスペシャル 映像の世紀」。若い方には、観ておいてほしいと思うものの
自分ではなかなか。。。
でも、そんな私でも繰り返し観たくなるものもあります。今回新しく購入したDVDの中に
劇団四季の「昭和の歴史三部作」を入れてもらいました。どれもミュージカルで、本当は
舞台を観てほしい作品です。
「李香蘭」は、女優山口淑子の「李香蘭 - 私の半生」を原作として作られ、「異国の丘」は
シベリア抑留がテーマ、「南十字星」は南方戦線のインドシナが舞台です。
私は3作とも舞台を観ていますが、数年前に最初に観た時にはとても辛くて、観終わった
あとも心が重かったものです。でも、今年再演にあたり、やっぱりヨコシマな理由で、最初の
2作をもう一度観にいきました。年を重ねたせいか、「戦争の話」という思い込みのフィルター
がはずされ、ストーリーそのものが、心に響いてきました。観にいって本当によかった、
と思いました。
私のお薦めは「異国の丘」です。残念ながら私のご贔屓は、このDVDが制作されたときには
キャスティングされていなかったので、映ってはいませんが。
「あの戦争から遠く離れて - 私につながる歴史をたどる旅」
城戸久枝 情報センター出版局 2007
※整理中です。もうじき書架に並びます。
「遥かなる絆」 NHK総合 再放送 お見逃しなく!!
2009年12月30日(水) 午後3時〜 第1回〜第3回
2009年12月31日(木) 午後3時〜 第4回〜最終回
最新へ戻る 2009年の目次へ戻る
作品に励まされてます… (2009.11.24.)
今年もあと残すところ1ヶ月余りとなりました。巷では新型インフルエンザが猛威を振るい、おちおち街を歩き回ることも
できず、スーパーに買い物に行っても”新型インフルが…新型インフルが…”と連呼され、小心者の私をゆっくりさせて
くれません。心の中ではうるさいとは思いつつも、せっせと予防に励む毎日です。
みなさん、予防対策されていますか。自分だけでなく、周りへの思いやりも込めてしっかり対処していきたいですね。
忙しい方にオススメの短時間で読めるけど心に残る作品を2つ上げてみました。
ひとつは『奇跡の贈り物〜本当の自分に会える〜』(葉祥明著 愛育社)
もうひと月もすると、クリスマスですね。そんなクリスマスイブにちなんだ、恵まれない環境に打ちひしがれた主人公に
不思議な奇跡が起こる話です。
信じることのすばらしさを、葉祥明さんの素敵な絵と共に楽しめる作品です。
今年アニメにもされたディズニー映画「クリスマスキャロル」にも似たお話ですが、読後に同じく希望を
感じられることと思います。
葉祥明さんの作品は、『地雷ではなく花を下さい』等反戦を訴えた作品が世に知られていますし、今も精力的に活動
されている方です。
また、『葉祥明美術館』(作品社)には北鎌倉と熊本にある葉祥明美術館の代表作をを紹介していて画集として楽しめます。
もう一つは『求めない』(加島祥造著 小学館)
2007年に出版された加島祥造さんの詩集です。
「求めないーー…」で始まる全体に流れる思想は、老子をこよなく愛する加島さんの思いが込められていて、
つい色々なモノを求めてしまう現代人に対するブレーキのようにも思えます。
回りに振り回され、自分をなくしてしまいそうな時、今の自分に満足できない時などちょっと考える方向を
変えてみるきっかけになるのではないでしょうか。
ほかに『LIFE』(パルコ)なども出版されています。
日々現実は厳しく、文芸作品に励まされているようではいけないと思いつつ、それでも言葉を信じて
少しでも真っ当な毎日を送ってみたいなと思います。
年を追う毎にともすれば悪い、狡賢いほうに向かってしまう自分に自戒を込めて…
心に少しでも清流を流し込める文章を探してみたいこの頃です。
最新へ戻る 2009年の目次へ戻る
「会議は苦手」 (2009.11.11.) by T先生
先日、ある授業を見学させてもらいました。いわゆるSGD(スモールグループディスカッション)形式の
授業でした。最近は、こういう授業がとても多くなっていますね。6年制の特色の一つなのだと思います。
学生のみなさん、とても熱心に取り組んでいるように傍からは見えました。議論の推移も円滑で、まさに
絵にかいたような出来栄え。すごいなー。と思います。私が学生でなくてよかったと胸をなでおろすばかりです。
そもそも私はSGDといわれるような、いわゆる少人数での議論とか、会議とか、打ち合わせ、といったものが
苦手です。こういったもの全てにぞっとします。私は身体を動かしているのが好きで、じっと座っているのが
嫌いなのです。それなのに、最近の私には会議がとっても多いです。だから、一刻も早く会議が終わってくれない
ものかといつも思っています。会議が早く終わるにはさくさくと議題が進んでいくことが重要で、余計な会話が
なければ良いのだと思います。自分はそういう余計な時間をとってはいけない、と恐れるので、できるだけ
黙っていようと思います。誰かと議論するなんてとても神経を遣いますし、相手の気分を損ねるようなことを
言ってしまったら人間関係も壊れてしまいそう…。とにかく黙っていよう!と決意して会議に臨みます。
でも、ずっと会議のなりゆきをただ黙って聞いていると、「そんなあ〜??」てことが多くなって、心の中で
「黙ってろ!」と指令が聞こえているのにもかかわらず、ある瞬間でキレるわけです。たいていそういうときは
制御がきかなくなっているので会議に出ている他の人たちには「えらい剣幕!」て思われるような発言になり、
そうなると後へは退けず、会議の終わり頃にはいつも惨めな思いをしています。
こんな私でも、一つだけ、議論を交わすのが好きなことがあります。それは、研究に関してです。
研究のことだったら、実験のことだったら、いくらでも議論できます。私はホントに研究が好きなんです。
毎日毎日実験できればそれが幸せ。だから、研究に関しての議論は大好き。でも、それ以外のテーマでは
うまく議論できたためしがありません。学生のみなさんのSGDを見習いたいものだとつくづく思います。
どうやったら上手に他人と議論を交わし、短い時間で会議を終わらせることができるのか。私には大変な命題です。
これからもSGDの授業を見学させていただいて、学生の皆さんから教えてもらおうと思っています。
最新へ戻る 2009年の目次へ戻る
改正します! (2009.10.28)
平成22年1月1日より著作権法の一部が改正されます。
例年になく大規模な改正となるということで注目が集まっているようです。
改正の概要は以下4点。
1.インターネット等を活用した著作物利用の円滑化を図るための措置
2.違法な著作物の流通抑止
3.障害者の情報利用の機会の確保
4.その他 登録原簿の電子化
今回はデジタルコンテンツを対象とした改正となるようです。
特に2点目の“違法な著作物の流通抑止”は、みなさんの生活に直接
関わってきそうなので、ちょっとご紹介を!
“違法な著作物の流通抑止”では、著作権者等の許諾を得ずにインターネット上に
アップロードされた、違法なインターネット配信による音楽・映像を違法と知りながら
複製することを私的使用目的でも権利侵害とする、としています。
(罰則はないようですが…。)
つまり、違法なコンテンツと知っていながらダウンロードをしてしまったら違法!
ということですね。
1つ例を挙げると、携帯電話向けの音楽配信では年間のダウンロード曲数が
正規でダウンロードされた曲が約3億3千万曲に対し、
違法にダウンロードされた曲は約4億曲になるそうです。 ※日本レコード協会調査
正規で配信している会社はもちろんのこと、著作権者の損害はたまったものではありません。
知らないうちに違法行為をしてしまった!ということがないように、十分ご注意ください!
最新へ戻る 2009年の目次へ戻る
相模湖を楽しもう (2009.10.14) by A先生
朝晩を、涼しいではなく、寒く感じるようになってきた。大学に行く時に目に入ってくる山々も、
少しずつであるが色づき始めていると感じる。まもなくすると、相模湖を取り巻く赤や黄色の
錦がみられるかと思うと、キャンパスが相模湖にあることに感謝する気持ちが湧き起こる。
本当に、春の新緑にちりばめられた山桜の薄い桃色、赤や黄色のみごとな色の山を照らす朝日
などは、一見の価値がある。
このような立地にある薬学部に通うため、多くの学生は相模湖駅を利用していると思う。
相模湖駅からバスに乗り、しばらくすると相模湖が見える。ところで、この相模湖に関することを
どれくらい知っていますか?
相模湖はダム湖である。相模川を相模ダムにて堰き止めて出来た。昭和19年の12月にダムができ、
最終的には昭和22年6月に完成したそうである。このダム建設のため、勝瀬村が相模湖の底に
沈むなど、終戦時期の大事業であったと予想できる。最近まではダムの上を歩くことが出来たが、
最近になって安全性の面から、通行禁止となった。ダムの上からの眺めは絶景であったので、
この季節、とても残念である。
東京でオリンピックを開催しようと話題になったが、実は相模湖は1964年の東京オリンピックの際に、
カヌーの会場となった。バスからは、相模湖の中の島にカヌーの審判塔が建っているのを見ることが出来る。
また、相模湖交流センター近くの丘の上には、記念の碑がある。
1954年の10月には、相模湖で悲しい事故が起こった。東京の某私立中学が遠足で相模湖を訪れ、
遊覧船(内郷丸)に乗ったところ、その遊覧船が浸水し、不幸にも22名の学生が死亡した。
定員をオーバーしていたことが原因で起こったようである。
学生諸君が相模湖の近くに行くのは、8月1日の花火の日だけだろうか。
ボートに乗ったカップルは別れるとの帝京都市伝説もささやかれているが、ここにあげた話以外にも、
レトロなゲームセンター、日本初の白鳥型遊覧船など色々な発見がある相模湖を楽しむのに
いい季節がやってきた。
最新へ戻る 2009年の目次へ戻る
10年前の今日・・・ (2009.09.30.)
※久しぶりの更新です。
担当者の怠慢で「こみみ」も長い夏休みをいただいてしまいました。
申し訳ありません。
これからは通常の更新頻度に戻していきたいと思いますのでよろしくお願いします。
さて、本日は9月30日ですので、この日に関わりの深い本をご紹介します。
「朽ちていった命 : 被曝治療83日間の記録」
NHK「東海村臨界事故」取材班 著
新潮社 2006.10発行 (新潮文庫)
*3階文庫コーナー 請求記号:493.19/KU
1999年9月30日、茨城県東海村のウラン燃料加工工場で「臨界事故」が発生し、
従業員3名が被曝、うち2名の方が亡くなりました。
この本は、この事故の被曝後の治療に焦点をあてて制作されたNHKスペシャル
(2001年放映)を書籍化したものの文庫版です。
病院に運び込まれた当初は外傷が見られず、意識もはっきりしていた患者に、
徐々に放射線被曝による影響があらわれていく様子がつづられています。
この事故は国内で初めての臨界事故であったため、病院のスタッフも前例のない
治療を手探りの状態でおこなっていくことになりました。
患者に何をしてやれるのかと苦悩する看護師、治療を続けていくことに疑問を感じる医師、
患者が亡くなったあとでも自問自答を繰り返しているスタッフもいます。
最前線にたつ医療従事者たちが様々な思いを持って困難な治療にあたったことを
感じとることができます。
患者が亡くなったあと、治療の中心にあった医師はこのように感じたそうです。
「勝てぬ戦に挑んだドン・キホーテの闘いだったのだろうか」
10年前の事故を覚えていない方も多いかもしれませんが(当時まだ小学生の方もいますよね?)
放射線被曝の恐ろしさとともに、医療のあり方というものについても考えさせられる本だと
思います。文庫版で手にとりやすくなっていますので、ぜひ一度ご覧ください。
最新へ戻る 2009年の目次へ戻る
インフルエンザに関する本と特集記事 (2009.07.03.)
新型インフルエンザの感染が拡大していますね。
弱毒性ということで、最近はニュースなどで大きく取り上げられることも少なくなりましたが、
新型インフルエンザは湿度の高い梅雨時期になっても感染が止まらないなど
感染力が比較的強いらしいですし、
また、秋以降に「第二波」が来るのではとも報道されていますね。
そこで、インフルエンザ関係の図書や所蔵雑誌の特集記事をご紹介します。
興味のある方はご覧になってみてください。
【図書】
「麻疹が流行する国で新型インフルエンザは防げるのか」
岩田健太郎著 亜紀書房 , 2009.3
3F一般図書 493.872/IW
「史上最悪のインフルエンザ : 忘れられたパンデミック」
アルフレッド・W.クロスビー [著] ; 西村秀一訳・解説 みすず書房 , 2009.1
3F一般図書 493.872/CR
「最強ウイルス : 新型インフルエンザの恐怖」
NHK「最強ウイルス」プロジェクト著 日本放送出版協会 , 2008.5
3F一般図書 493.87/NH
【特集記事】
ウイルス感染の仕組みを追う-パンデミックから慢性ウイルス感染まで
「細胞工学」 27巻12号 (2008/11/22)
新型インフルエンザの流行とその対策
「医薬ジャ-ナル」 44巻11号 (2008/11/01)
流行を食い止める-新型インフルエンザ-
「Mebio = メビオ : Graphic medical magazine」 25巻11号 ( 2008/11/10)
最新へ戻る 2009年の目次へ戻る
筆一本の至芸 (2009.06.17.) by O2先生
ドイツ・ロマンチック街道の起点、ヴュルツブルク。フランケン地方のワイン集積地
でありレントゲンがX線を発見したことでも知られるこの街にかつて一人の彫刻家が
工房を構え、祭壇や墓碑に数々の傑作を残した。ティルマン・リーメンシュナイダー
(1460頃〜1531)、ドイツが神聖ローマ帝国と呼ばれていた頃に活躍した彼は農民戦争
の渦中、大司教座がありながら農民側を支持したこの街の市長であった責任を問われ、
腕を折られて彫刻家としての命脈を絶たれた悲劇の人でもある。彼の彫刻はあたかも
ヴェスビオの火山灰の中から蘇ったポンペイの遺跡の如く、木や石の塊から発見され、
現在の姿のまま丹念に掘り出されたかのように見える。祭壇を囲む群像も墓碑や石棺
に掘られた肖像も彫刻とは思えないほどに作為を感じさせず、自然な表情を浮かべて
今にも動き出しそうである。異邦人の眼にも作者の並々ならぬ敬虔さが伝わってくるが、
精緻にして荘厳な作品には宗教の違いを越えた普遍的な美しさが感じられる。
小説とは虚構でありながら、名手の筆は現実以上に真実味を帯びた物語さえも紡ぎ
出す。生涯のほとんどをケーニヒスベルクで過ごし、渡英の経験は一度もない哲学者
カントがロンドンの街並みを熟知していたように、藤沢周平の熱烈な愛読者は北国の
架空の小藩海坂(うなさか)の城下町の様子を克明に思い描くことができるという。
藤沢が若い頃教壇に立っていたことはよく知られているが、もう一人、高校で国語を
教えつつ覆面作家としてデビューした尋常ならざる書き手がいるのをご存知だろうか。
中世ドイツの彫刻家が木や石の中から人間の営みの美しさを彫り出して見せたように、
この人物も紙という二次元の素材の上に至福の時空、即ち、存在感と人間的な魅力を
併せ持った登場人物たちのドラマを堂々と描き切るだけの筆力を持っている。
字面だけからは性別が不詳な名前の持ち主は意外と多い。勘違いからとんでもない
目に遭ったという話もよく聞くが(念のために言うが、身に覚えがある訳ではない)、
北村薫という筆名のこの作家もそうした紛らわしい手合の一人。処女作「空飛ぶ馬」
の主人公が大学生の女の子であったため、作家自身もうら若い女性に違いないと勝手
に思い込んだ挙句、謎の覆面作家の正体が実は中年のオジサンだったと知って幻滅し
三日間も寝込んだ愛読者もいたそうな。前記「空飛ぶ馬」から「夜の蝉」、「秋の花」、
「六の宮の姫君」、「朝霧」に至る連作(いずれも東京創元社刊、創元推理文庫所収)
はくだんの主人公が出逢った“日常の謎”を、知り合いの落語家、円紫師匠が解いて
いくという趣向のもの。一種のアームチェア・ディテクティブ(安楽椅子探偵もの)
の体裁を取りながらも、主人公の人間的成長を綴ったビルドゥングスロマンである。
兎も角、登場人物の描き方が巧みなのには舌を巻く。「夜の蝉」は日本推理作家協会賞
受賞作として評価が高いが、この中では「六の宮の姫君」が白眉であると断言したい。
芥川の有名な短編誕生の背景に、ある先輩作家とのキャッチボールのような遣り取り
があったという卓抜な推論には思わず膝を打ちたくなること必定である。
これだけ書ける作家になると、およそ物理法則に反することでもある種の説得力を
もって書いてしまうのだから堪らない。“時と人”をテーマに書かれた三部作中の二作、
「スキップ」と「リセット」(いずれも新潮社刊)が図書館に所蔵されているが、これらは
その典型であろう。作品として綺麗にまとまっているのは後者かも知れないが、
より強く訴える力を持っているのは前者だと思う。(ちなみに、三作の中で最も微温的
な「ターン」が無いところに我が図書館の慧眼を感じる。どんな名手とて常に最高の
水準の作品を生み出せるというものではない。)
もっと自然に、しかも深い内容のある複数のテーマを同じ器に盛り込んで、且つ、
見事に描き切ったのが朝日新聞に連載された「ひとがた流し」だろう。これは図書館
にも所蔵されているうえに(朝日新聞社刊)、先月新潮社から文庫版が刊行された矢先
なので手に取られたことがある方も多いのではなかろうか。もしかすると北村さんは
この作品を書いているとき、作中のある登場人物と同じように自分の創作活動の中で
「生涯に二度と登ることはないと思った高みに、指をかけている」と意識していたの
かも知れない。思わず、そんな勝手な解釈をしてしまいたくなる佳品である。
解釈といえば、北村さんは都の西北にある母校の教壇に立って表現に関する授業を
行ったそうだ。その一部が活字化されて「北村薫の創作表現講義 あなたを読む、私
を書く」という題で新潮選書から刊行されている。優れた書き手であると同時に比類
ない読み手でもある同氏は、「読むというのは、自分がどういうところに立っているか
―自分の位置を示す行為に外なりません」と言う。他者の表現を解釈することもまた
自身を表現するのと同義である、という訳だ。なるほど、その通りだと思う。創作の
舞台裏のみならず表現上の工夫から読書の楽しみ方までを練達の士から教わるという
のも悪くない。
明治の文人斎藤緑雨の名言に「按ずるに、筆は一本也、箸は二本也。衆寡敵せずと
知るべし」というのがあるが、どうしてどうして一本の筆をもって八面六臂の活躍を
してしまう才人もいるものである。地味な作家ながら眼が離せない。
追記:
なお、彫刻家リーメンシュナイダーとその作品に興味をお持ちの方には
高柳誠著「リーメンシュナイダー ―中世最後の彫刻家」(五柳書院)
をお薦めする。
(図書館注)
図書館にある北村薫の著作は以下の通りです。
請求記号はすべて 913.6/KI です。
* スキップ (新潮文庫) ※文庫コーナー
* リセット (新潮社)
* ひとがた流し (朝日新聞社)
* 街の灯 (文藝春秋)
* 玻璃の天 (文藝春秋)
(7/18図書館追記)
北村薫氏が第141回直木賞を受賞しました!!
受賞作「鷺と雪」は、図書館でも所蔵している「街の灯」「玻璃の天」からつづく
連作シリーズの3作目(完結編)です。
最新へ戻る 2009年の目次へ戻る
「グイン・サーガ」 (2009.06.03.)
5月の終わり、作家の栗本薫さんの訃報に接した。私は栗本さんの
代表作「グイン・サーガ」に高校生のときにはまった。
友達にも薦めまくり、たくさんの人に読んでほしいから、高校の図書室
にもいれてほしいと、司書の先生にお願いした。ちなみに先生にはこの
要求は嫌がられた。今では先生の気持ちがよくわかる。限られた予算
で、一つのシリーズだけを延々と買い続ける訳にはいかないからだ。
それからも、はまると深いタチの私は、本は刊行されたら買い、イメージ
アルバムも大人買い、ミュージカルも観にいった。
それなのに、忙しくなって読むのを後回しにしたら、どんどん遅れをとって
しまい、結局つん読状態になってしまった。何巻まで買ったかわからなく
なって、このところ購入していないが、手元にはかなりの巻数がある。
どこまで読んだかも当然忘れているので、思い立って最初から読み直す
ことにした。それが5月の初旬だった。
読み始めてすぐの訃報だった。まだ2巻の途中であるというのに、あまり
にも哀しい偶然にページをめくる手がとまってしまった。未完の物語は、
129巻までは刊行が決まっており、絶筆の130巻も刊行されそうである。
「グイン・サーガ」は、「もっとも長い小説」として、出版社がギネスブックに
申請したそうだが「1冊の本ではない」という理由で却下されたと聞いた。
ファンとして疑問に思うのは、複数作家によって書かれている「宇宙英雄
ペリー・ローダン」シリーズが認定されていることである。「世界最長の
小説シリーズ」として、ということであるが、やはり解せない。
ローダンシリーズは、私は早くも1巻で挫折したのだが、ウィキペディアに
よると、本編の他に第2シリーズや外伝があるらしい。日本では本編の
原書2巻を1冊として刊行しているそうで(しかも毎月刊行)、次の新刊は
なんと361巻である。何巻まで刊行されているのか久しぶりに調べたので、
さすが、と思っていたが、第2シリーズは全850巻だという。これには驚きを
通り越してあきれてしまった。途中で登場人物やストーリーがわからなく
なりそうだ。巻数を見ただけで、再チャレンジがないことを確信した。
「グイン・サーガ」は今年が誕生から30年ということで、豪華本や新装版が
刊行されたり、アニメ化がされたりして、新たにファンになった方も多いと思う。
本当に残念でならない。
1ファンとして、心から栗本薫さんのご冥福をお祈りいたします。
最新へ戻る 2009年の目次へ戻る
甲斐善光寺の「鳴き龍」 (2009.05.20.)
とある休日、山梨県にある甲斐善光寺を参拝してきました。薬学部から西へ向かって高速道路を使って一時間く
らい(甲州街道をのんびり行けば2時間くらい)甲府市の中心から少し東寄りにあります。善光寺のパンフレッ
トに寄れば、開祖は武田信玄で、川中島の合戦の折り、信濃善光寺の焼失を恐れ、1558年御本尊善光寺如来像を
はじめ、諸仏寺宝類を奉遷したことからこの地にあるそうです。その後、武田氏滅亡により、御本尊は織田、
徳川、豊臣氏を転々としましたが、1598年(関ヶ原の戦いより2年前)信濃に帰座されたとありました。そのか
わりに、甲府の善光寺では前立仏を御本尊と定め、現在に至っているとのことです。私は機会がなくて、まだ
長野の善光寺は見学していないので、実際に訪れて規模等を比べてみたいと思いました。
甲斐善光寺を訪れたならぜひとも一度「日本一の鳴き龍」を体験してみてください。「鳴き龍」は金堂中陣
天井に朱で描かれた(年月が経っているのでわかりにくい!?)二頭の巨大な龍で、廊下の白い足形の場所で手を
叩くと、ビーンと胸に響く音がかえってきます。これは、廊下の釣り天井部分が手を叩くことにより多重反響
現象により共鳴が起こっているせいだそうで、何度やってもその音が胸に響いてきます。しかも、廊下を外れた
場所ではただの手拍子に聞こえるので不思議です。
この現象についてのYahooの百科事典によれば、
”天井と床等のように互いに平行に向きあった堅い面がある場所で、そこには龍の絵が有名な狩野派等によって
描かれている。拍手・足音などの衝撃性短音を発したとき、往復反射のためピチピチとかブルブルなど特殊な音
色をもって聞こえることがある。この現象をフラッターエコーflutter echoあるいは鳴き龍と呼ぶ。”
と紹介しています。
この鳴く龍を聞けるスポットとして、代表的なものは日光の東照宮薬師堂(本地堂)の内陣天井に描かれた
龍の頭の下で、天井にすみついた鳩を追い出そうとして、手を叩いたとき、ブルブルと奇声を発するという現象
が発見されたという。1961年に焼失したが、近年天井画も鳴き龍現象も復元されたといいます。
他にも京都相国寺法堂(ほっとう)の鳴き龍はもっとも古いと言われ、鳴竜山妙見寺(長野県上田市)や正源寺
(富山県富山市)ここから一番近いスポットとして高幡山明光院金剛寺(東京都日野市)があげられています。
また、鳴き龍と同じ現象がおこることで有名な橋として、広島県と愛媛県を結ぶしまなみ街道にかかる多田羅
大橋を紹介しています。
甲斐善光寺は規模として日本一ということで、有名なようです。
もう一つ体験したのは「お戒壇廻り」です。
これは金堂裏の入口から中に入って奥にある鍵に触れてくると御本尊との良縁が結べるとのことです。ただし
中は真っ暗で手すりはあれども見えません。目を開けていても足下も天井も見えない事を体験することで自分の
五感を信じ、回廊(心という字を形取ったとされる)を戻ることで見えることのありがたさを実感しました。
おおげさにいえば世界がかわります。(ホンの数分ですが)
この2つの体験は、長く生きてきた中で貴重なものとなりました。
今年は、長野善光寺と併せて7年に一度のご開帳の年に当たるので、御本尊も公開しています。
また、余談ですが甲斐善光寺にまつわる山梨の民話を調べたところ、「娘と柳の精」というお話があるようで
す。『甲州むかしばなし』によれば、「おやかた様(武田信玄)が信濃攻めに向かう際、長野善光寺の仏様を焼い
てしまうのを惜しがり、仏さんたちを移すことになったのだが、大きい寺なので本堂を支える棟木がない。近隣
の高畑村に柳太という名の青年がいた。その隣の東光寺村の娘お琴と恋人同士だったが、この柳太という青年、
実は柳の精で、棟木にするため切り倒れたが千人の男たちが力を合わせてもその場から動かない。ところが。
お琴が来て綺麗な声で歌を歌ったところ、不思議にひとりでに動き出した」という話です。その後、善光寺が完
成すると、お琴は観音さんになって棟木の側に座り続けたとされているとのことです。
最新へ戻る 2009年の目次へ戻る
スーザン・ボイルを知っているかい? (2009.05.09.) by A先生
You tubeを知っているだろうか? “You” あなたの “Tube” テレビという意味で名づけられた
サイトであり、多くの人が動画を投稿し、互いにその動画をみることができる巨大なサイトである。
まあ、学生諸君は知っているであろう。
これまでにも多くの人がアクセスし、有名人となった人やYoutubeでの出演がきっかけで
レコード会社などと契約を結んだ人などもいる。最近、新たなYoutubeからのスターが
生み出されたことを知っているだろうか。その人の名前は、スーザン・ボイルさんである。
彼女は、スコットランドの片田舎に住む47歳の独身女性である。彼女が英国のオーディション番組に
出演したときの様子がYoutubeに流れると、なんと5000万回以上のアクセスが記録された。
彼女がまれにみる美女であったためではない。彼女が抱腹絶倒のコメディアンであったわけではない。
彼女は、こう言っては失礼だが、どこにでもいるような普通の「おばちゃん」である。
では、いったいどうしてこれほどまで、全世界的にも注目を浴びたのかといえば、それは彼女の
歌唱力であった。筆者も見たが、歌唱力はすばらしいものであり、ミュージカル女優のように感じる。
特に、その見た目とのギャップが、さらにみているものを釘付けにする。観客が驚き、あっけに
取られる様子は、逆に痛快である。
まじめな新聞では、外見でヒトを判断するなだとか、人々はサクセスストーリを望んでいるなどと
コメントしているが、そのようなことは横に置いておいて。とにかく、一度アクセスして、彼女の歌声を
聞いてみよう。
You Tube - Singer - Britains Got Talent 2009 (With Lyrics)
http://www.youtube.com/watch?v=9lp0IWv8QZY
最新へ戻る 2009年の目次へ戻る
わたしを離さないで (2009.04.30.) by T先生
新年度になり、図書館に行くと国家試験前の殺気立った雰囲気とはがらりと変わり、
いつもの図書館らしい落ち着いた静かな空間が戻っていました。私はこういう雰囲気の
図書館が好きです。学生さんにとっては勉強の場というイメージが強い図書館かもしれませんが、
窓際の柔らかな日ざしの下で勉強に関係ない本をぱらぱらとめくって眺めている時間が本当は
大事なんじゃないかと思います。この時期、図書館の窓際での読書は気持ちいいですよ。
たとえば、「わたしを離さないで」は薬学部の学生さんにぜひ読んでいただきたい本ですね。
カズオ・イシグロさんの名前を知っている人は多いと思います。イギリスの作家ですが、
日本生まれの方です。映画化された「日の名残り」が有名ですね。「わたしを離さないで」では、
イギリスの寄宿学校にありがちな子供たちの暮らしが淡々と回想されていきます。でも、一つ一つの
できごとのちょっとした隙間に、心にひっかかるフレーズが見え隠れし、先へ進むに連れてだんだんと
重たいものを感じさせます。恐らく、薬学部の学生さんならかなり早い段階でことのからくりが
見えてしまうことでしょう。薄っぺらな読み方をすればこの本は生命の尊厳を問うている、なんて
ことになるのかもしれませんが、そんなおおげさなテーマを扱っているように見せかけておいて、
実は、もっと大切な人間のこころを丁寧に描くことに徹底している点が素晴らしいと思います。
特に、逃れられない現実を受け入れていく人間のこころのしなやかさ、たくましさを淡々と記述して
いくところは、英国で育ったとはいえ、日本人らしい語り口だと思います。とても悲しいお話のはずなのに
最後には満ち足りた思いさえ与えてくれる素晴らしい作品です。こういう作家が英国を土壌として
育ったこと、今の日本には無理だったのだろうな、と少し残念にも思います。
風薫る季節。一冊、文庫本を読んでみませんか?しばし、難しい化学式を忘れて、ページをめくる
幸せな時間を味わってください。皆さんにすばらしい作家との出会いがありますように。
(※図書館注)
「わたしを離さないで」(カズオ・イシグロ著/土屋政雄訳)は以下の場所にあります。
配置場所:3階一般図書 請求記号:933/IS
最新へ戻る 2009年の目次へ戻る
コトバ (2009.03.27.)
4月は新しい環境になり、期待や不安で心身ともに疲れやすい時期です。
そんなときに、元気になれそうなコトバをいくつか図書館で拾ってみました。
★『ドラことば─心に響くドラえもん名言集』より
「きみはこれからも何度もつまづく。でもそのたびに立ち直る強さももってるんだよ。」
「いちばんいけないのはじぶんなんかだめだと思いこむことだよ。」
「道をえらぶということは、かならずしも歩きやすい安全な道をえらぶってことじゃないんだぞ。」
「いいじゃないか、つまらないことにいつまでもこだわらないで。」
★『アツイコトバ』より
「自分らしく、もっと言えば「自分だけ」らしく。」
「10分あれば、人間は変わることができる。」
「考える前に行動せよ、行動しながらもっと考えよ。」
「究極の自信と究極の不安を同居させよ。」
★『人生に、寅さんを。─男はつらいよ名言集』より
「やっぱり、真面目にね、こつこつこつこつやっていきゃ、いつか、芽が出るんだから。」
「泣きな。いくらでも、気のすむまで泣いたらいいんだよ。」
「寂しさなんてのはなぁ、歩いてるうちに風が吹き飛ばしてくれらぁ。」
「大丈夫だよ、まだ若いんだし、これからいい事いっぱい待ってるよ、な。」
個人的に“グッ”ときた言葉は、寅さんの
「生きてる?そら結構だ!」
です。言葉自体は単純ですが、寅さんの人柄から出る言葉に奥深さを感じました。
今回紹介した本の他にも、元気になる本があると思います。
ぜひ、探してみてくださいね!
引用・参考書籍
『ドラことば─心に響くドラえもん名言集』
3F一般図書 請求記号:914.6/DO
『アツイコトバ』
3F一般図書 請求記号:159/SU
『人生に、寅さんを。─男はつらいよ名言集』
3F一般図書 請求記号:159/JI
最新へ戻る 2009年の目次へ戻る
今日はなんの日? (2009.03.11.)
つい最近ですが、「雑誌の日」というのができたそうです。「ザッシ」の語呂あわせから
「3月4日」が雑誌の日、さらにそこから「3月4月は雑誌の月」とのこと。
この「雑誌の日」を含め、記念日に関しては「日本記念日協会」という団体が
申請受付・認定をおこなっていますが、この認定が公的・法的な効力を持っていると
いうわけではないそうです。
ただ、「〜協会認定の記念日」とあるとなんとなくすごそうですよね。
この協会のホームページでは協会認定の記念日がたくさん紹介されていました。
ざっと見ていくと、記念日の認定が多い日付は・・・「8月8日」そして「11月11日」。
覚えやすい、語呂あわせがしやすい、などの理由からでしょうか。
8月8日の例で言えば・・・
【葉っぱの日】 → ハッパ
【おばあさんの日】 → バアバ
【歯並びの日】 → 歯(8)並び
【親孝行の日】 → ハハ(母)+パパ(父)
などなど・・・「8」がいろんなものに化けています。
ちょっと変わったところでは
【屋根の日】 → 漢字の「八」の形から
【ちょうちょの日】 → 数字の「8」を横にした形から
うーん、いろいろ考えますねぇ・・・
また、「11月11日」は「1」が4つ並ぶということもあってか人気のよう。
この日付は語呂合わせというよりその形からきているものが多いようです。
きりたんぽの日、ポッキー&プリッツの日、めんの日(毎月11日も)など・・・
しかし、次の記念日は11月11日の由来を当てるのが難しかったです。
【鏡の日】 → 漢字で裏返しても同じになる「鏡文字」だから(ナルホド・・・)
【鮭の日】 → 「鮭」のつくりの部分を分解すると・・・十一十一になりますよね?
【おりがみの日】 → 1が4つ並ぶ=1つを辺として見立てて4辺=おりがみ(く、苦しい・・・)
【サッカーの日】 → 11人対11人でおこなうスポーツだから(まあ確かに・・・)
ちなみに、本日「3月11日」は
【めんの日】 (さっきも言ったとおり、毎月11日なんです!)
【パンダ発見の日】 (歴史的な由来から)
でした。1年365日、すべてなんらかの記念日になっているようですので、自分の誕生日
などを調べてみるとおもしろいかもしれません。
日本ではあまり聞いたことがありませんが、世界には「薬剤師の日」や「薬局の日」が
制定されている国もあるようです。
ちなみに「図書館の日」である【図書館記念日】は4月30日です。お見知りおきを・・・
最新へ戻る 2009年の目次へ戻る
音楽家と病気(9)
医学と音楽 −医師ベルリオーズと麻薬− (2009.02.25.) by K先生
このところ、大学生の覚せい剤使用が話題になっています。医療に携わるべく勉学に
励んでいる学生は、その薬効はもちろん、法律による規制にも熟知していると思いますが、
芸能、芸術の分野では無知から来るのか、その芸術的センスに磨きがかかるのか、
だいぶ昔からその乱用が世間をにぎわしています。
今回取り上げたベルリオーズ(1803〜1869)は、「幻想交響曲」で有名なフランスの
作曲家です。2楽章「ワルツ」や4楽章「断頭台への行進」は、耳になじみがある方も
多いと思います。ベルリオーズは、フランスの小さな町(ラ・コート・サンタンドレ)の
名家出身で、父親は医師で人格者でした。しかし、父親は長年胃疾患に悩み、
苦痛を和らげるため阿片を常用し、自殺を試みたことがあったそうです。
一方、母親は、演劇や音楽に携わる職業を自堕落人間という偏見を持っていました。
ですから、パリの医学校で学んだベルリオーズが、その後音楽家志望に転じたことは、
母にとっては許せない行為であったようです。
ベルリオーズは父の勧めで医学を学び始めましたが、解剖実習でとてつもない恐ろしさを
感じ、一度は諦めかけました。しかし、友人たちの熱心な勉強ぶりに刺激され、気を持ち直して
医師になりました。しかし、人口3000人ほどの田舎町から出てきた青年には、パリの街に
溢れる芸術は刺激的であり、医学生時代からオペラ座の常連になってしまったそうです。
音楽に対する興味は膨れ上がり、ついに感受性の高いベルリオーズは、23歳の時に両親の
反対を押し切って音楽の道を目指し、パリ音楽院に入学しました。初めてのコンクールの時には
咽頭炎を患って出場できませんでしたが、このとき、医師である彼はペンナイフを使って、
自分で膿瘍を切開したそうです。
音楽院の学生時代は、パリの街にちりばめられた魅力的な音楽に感動しては病的に
興奮して塞ぎこみ、全く仕事が手につかなくなるといった躁鬱状態を繰り返すことになった
そうです。この感情起伏の激しさは、恋愛にも大きく影響し、婚約破棄された相手の家族に
攻撃心を抱いたり、自殺を試みたりを繰り返し、激しい内面の葛藤とストレスが鬱積して、
後年、腸神経痛と呼ばれる症状で苦しむことになります。これは、今日では粘液疝痛、
あるいはベートーベンをも苦しめた過敏性腸症候群ではなかったか、と推察されています。
有名な「幻想交響曲」は、ベルリオーズがパリ音楽院の学生だった27歳(1830年)のときの
作品で、ロマン派交響曲を先取りした斬新な傑作といわれています。ベルリオーズは、この
1曲で後世に名を残した、といっても過言ではないでしょう。名曲として耳を傾けると、それは
刺激的で、穏やかさ、やさしさ、激しさ、静寂と恐怖が見事な対をなして構成されていることを
感じますが、彼の背景、作曲された時の精神状態を考えると、あの感情の激しさが曲に
ぶつけられており、一層興味深く聴くことができるような気がします。
この後、ベルリオーズは数々の名作を世に送り出しますが、多感すぎる感情のコントロールに
苦しみ、生活に苦しみながら、晩年の大作、歌劇「トロイアの人々」にたどり着きます。
晩年は特に作曲家として認められ、学士院会員にも選ばれ、ヨーロッパを演奏して回ることが
多くなりますが、1869年3月8日、パリで65歳の生涯を閉じます。死因は良くわかっていませんが、
肉体的、精神的苦痛を和らげようとして阿片を常用していたため、阿片中毒による全身衰弱とも
考えられています。
父親の阿片使用を身近に見て育ち、同じ道である医学を志しながら、母の反対する芸術を
本職とし、自らの感情に苦しみながら阿片中毒でこの世を去ったベルリオーズに、波乱万丈の
人生と感じます。家庭環境、教育、生活環境が、知らず知らずのうちに如何に人の生き方に
影響を与えるか、再認識しました。
阿片は、戦争まで引き起こす恐ろしいものですが、麻薬は、現代医療になくてはならないものです。
くれぐれも濫用しないように。 (H.K記)
最新へ戻る 2009年の目次へ戻る
裁判員制度が始まりますね。 (2009.02.17.)
裁判員制度が今年の5月から始まりますね。
洋画などを観ていると裁判に市民が参加している場面があり
同じ制度かと思っていたのですが、
日本で始まる裁判員制度と欧米などで行われているのは
ちょっと違うようですね。
アメリカなどで行われているのは「陪審員」制度。
有罪・無罪の判定を行うだけで
陪審員が参加するのは民事裁判、刑事裁判両方のようです。
日本の「裁判員」制度では、有罪・無罪の判定だけでなく、量刑まで考えるそうです。
また、民事裁判には参加せず、刑事裁判のみ。
「刑事事件の中でも、国民の関心が高い、一定の重大犯罪に対する
刑事裁判が裁判員制度の対象事件」だそうです。
裁判員に最終的に選ばれる確率は、約3500人に1人、
パーセンテージに直すと、約0.03%程度だそうですが
選ばれるといろいろと大変そうですね。
現在、図書館の展示コーナーでは
図書館で所蔵している裁判関係の資料を展示しています。
数は多くありませんが、興味をもたれた方はどうぞご覧になってください。
展示資料のリストはこちらからどうぞ。
また、最近次のような本を受け入れしました。
こちらもどうぞ。
犯意 : その罪の読み取り方
乃南アサStory ; 園田寿解説 新潮社 , 2008.8
3F一般図書 913.6/NO
男はなぜパンツ一丁で郵便局に押し入ったのか : トンデモ裁判傍聴レポート
産経新聞社会部取材班著 小学館 , 2008.12
3F一般図書 327/OT
最新へ戻る 2009年の目次へ戻る
変わった食べ物 (2009.01.28.) by O2先生
もうすぐ1月も終わるので、ちょっと旬を過ぎた話題かも知れないが、
お正月のお雑煮というものには地方によって様々なバリエーションがある。
筆者の実家は横浜なのでお澄ましに四角いお餅、鶏肉と野菜で関東風だったが、
家内は関西育ちなので白味噌仕立てに丸餅を入れたお雑煮を頂くのが通例に
なっている。丸餅は橋本界隈ではあまり売られていなかったそうで、年末に
調達するのに少し苦労したらしい。本学にお世話になる前には13年ほど倉敷に
住んでいたが、かの地では丸餅や四角い餅はもとより、果ては餡入りの餅までが
お雑煮用に売られていた。瀬戸内海を挟んで向こう側の香川県の一部や、
そのまた隣の徳島県ではどうやら、この餡子入りのお餅をお雑煮の中に入れる
習慣があるらしい。好奇心に駆られて3年ほど前に一度、この変わったお雑煮を
試作してもらったことがある。とても不思議な味であった。恐らく糖分がとても貴重で、
甘いものがハレの席での何よりのご馳走だった時代の名残なのだろう。たった一度の
試行で結論を出すのは早計であまり科学的な態度ではないかも知れないが、
その後、我が家のお雑煮は従来通りに戻った。
さて、この餡餅のお雑煮はほんの序の口で、世の中にはもっと変わったものを
食べたという人がいる。とは言え、満漢全席とか王侯貴族の食卓での逸話ではない。
前任校で向かいの研究室にいらしたS先生は、それこそノーベル賞級の反応を
開発された非常にご高名な先生である。筆者のごとき若輩から見れば雲の上に
おられるような方だが、我が恩師と北大理学部で同期だったという奇縁もあって、
二度目の定年を迎えて北海道にお帰りになるまでの数年間随分と親切にして頂いた。
ある時、昼食をご一緒していたら「君はゾウの肉を食べたことがあるかい?」とおっしゃる。
ワニや駝鳥、せいぜいカンガルーくらいまでなら筆者とて食した経験があるが、
さすがに象は口にしたことがない。それどころか、ひとさまが象を食べたという話を
本で読んだという記憶すらない。さては国際学会でアフリカにでもいらした折の
エピソードかと思いきや、さにあらず。S先生曰く、太平洋戦争末期、戦況が悪化の
一途をたどる中で札幌の動物園にいた象を処分しないといけないことになり、
哀れな象は安楽死?の後に北大農学部で解剖されることになった。虎は死して
皮を残し、象は死して肉を残す。同じ下宿の農学部生がこの肉をこっそり分けてもらって
持ち帰った。下宿のおばさんに無理を言って料理してもらい皆でおっかなびっくり
食べてみたものの、硬くてあまり美味しくはなかった、とのことであった。
おしまいに「日本でゾウの肉を食べた化学者なんて僕ぐらいのものだろうね」との
コメントを嬉しそうに付け加えられたのがとても印象的だった。
いくら珍しくても美味しくなければねぇ、と思う方も多いかも知れない。そこで最後に、
とても珍しく、かつ美味なる「食べ物」のお話を紹介したい。もっとも、こちらは
「鍋のなかの解剖学」(風人社)という本で読んだお話。著者である新潟大学医学部の
藤田恒夫先生(現、名誉教授)は長年、「ミトコンドリアを食べてみたい」という
ユニークな夢を抱き、飲み会などでことあるごとに口にしていた。すると、「人生には、
希求し願望するだけで実現する物事もある」のだそうで、教室員の皆さんがこっそり
準備をととのえ、豚の脳20個から取り出したミトコンドリア・フラクションを調理した
「ミトコン・スープ」を饗されるという珍事に遭い、椅子からころげ落ちるほど驚かれた
という。肝心のお味はいかがかと言えば、「『ソフィスティケイテッド』ーきざな言葉だがー
とはまさにこの味かと思うほど素晴らしい一品だった」との由。まことに羨ましいかぎり
である。
さて、この本、こういうユニークな切り口の洒脱なエッセイが満載で、帯のキャッチ
コピーのうたう通り、まさしく「学問の愉しさにあふれる本」である。なかでも、著者宅に
居候(いそうろう)していた学生を海外からの来客に紹介した時に、「居候」の訳語として
苦肉の策で用いたある専門用語(さて、何でしょう?皆さん、ご存知の単語ですよ)の
話などは抱腹絶倒。あいにく、今のところ図書館には所蔵されていないようだが、
興味を持たれた方はまずは下記のサイトをご覧あれ。筆者の知らないうちに続編も
出ていたようである。
http://www.fujinsha.co.jp/books/nabe.html
http://www.fujinsha.co.jp/books/honind.html
追記:
藤田先生の本、図書館には何冊かの専門書のほかに、「細胞紳士録」と「腸は考える」の
2冊(いずれも岩波新書)がある。前者は様々な細胞をみごとなカラー写真と明快にして
含蓄のあるコメントで紹介してくれる。日頃の講義で名前だけは耳にしたことのある細胞も、
実際の姿を目にすれば格段に親しみが湧くというものだろう。
後者は著者のご専門に関する一般書で、歴史的な背景を紹介したうえで新潟大学での
ご自身の研究をエッセイ風の平明な語り口で活写されたもの。いずれも図書館3階の
新書のコーナーにあるので、手に取ってみられてはいかがだろうか。
※図書館注
○「細胞紳士録」(岩波書店) 491.311/FU 3階新書コーナー
「腸は考える」(岩波書店) 491.346/FU 3階新書コーナー
○「鍋のなかの解剖学」「続 鍋のなかの解剖学」は、現在発注中です。
最新へ戻る 2009年の目次へ戻る
『変な学術研究』後日譚 (2009.1.14.)
昨年(2008年)4月のこみみで、『変な学術研究』という本をご紹介しました。
ノーベル賞の授賞式のニュースでふと思い出したのですが、この本のサブタイト
ルにもなっている「光るウサギ」って確かクラゲからとれる蛍光物質を使っていた
ような・・・。でも下村先生のお名前が出ていたっけ? 受賞のニュースでは思い
ださなかったのに、などと考えながら、再度『変な学術研究』を手に取りました。
結果として、下村先生のお話ではなかったのですが、光るウサギにはやはり
緑色蛍光タンパク質(GFP)が利用されていました。本では科学者と芸術家の
争いが紹介されていたに過ぎなかったのですが、雑学というのは、こんな風に
つながっていくものなんだな、と偶然のおもしろさを感じました。ちなみに、『変な
学術研究2』が、読んでおもしろいものではなかったので、図書館での購入は
見送りました。
これで後日譚は終わってしまうのですが、せっかくですから、ノーベル賞に
ついてもう少し。といっても実は受け売りです。情報源は、長年図書館長を務めて
おられ、前学部長でもある遠藤浩良名誉教授です。先生は、常日頃から幅広く
アンテナを伸ばしておられ、さまざまな情報提供をしてくださいます。
私がちょうど光るウサギについて考えていたところ、先生からノーベル賞関連の
情報がいくつか寄せられました。中でもノーベル財団のHPから受賞記念講演を
視聴できるというのに驚き、早速アクセスしてみました。
言語の問題もあり、下村先生の講演は見ているだけ、だったのですが、薬学部
の皆さんなら、講演内容はもとより、スライドを見ているだけでも興味深いのでは
ないでしょうか。ぜひアクセスしてみてください。
同じく、ノーベル賞を受賞された益川先生の講演は、ご存じのように日本語です。
お時間のあるときに、いかがでしょうか。
HPからは、講演だけでなく、電話インタビューなども無料で視聴できます。
時間が表示されているのがまた親切でいいですね。
「変な学術研究 1」 エドゥアール・ロネ著 早川文庫 2007
各先生の講演・インタビューなどは、下記サイトを開いて右側にあるメニュー
からどうぞ。
ノーベル化学賞
http://nobelprize.org/nobel_prizes/chemistry/laureates/2008/index.html
ノーベル物理学賞
http://nobelprize.org/nobel_prizes/physics/laureates/2008/index.html
最新へ戻る 2009年の目次へ戻る