帝京大学薬学部 研究業績 | English
薬化学研究室

研究室紹介
 薬化学教室の教育・研究の根幹は、「有機化学」、「有機合成化学」、「生物有機化学」の3つの学問領域にあります。我々は純粋な「有機化学」を基盤とし、標的生理活性物質の骨格を効率よく構築する「有機合成化学」、確かな理論に基づき有用な生理活性物質をデザインし、その生理活性発現メカニズムを含めて評価する「生物有機化学」、以上すべての総合力が必要だと考えています。また、「薬学の有機化学」の観点に立ち、現実に役に立つ有機化合物である「医薬品」を究極の目的として研究し、育てています。生理活性物質の多くは有機化合物です。薬学部の学生には薬化学(Pharmaceutical Chemistry)の知識と研究の実体験が大変貴重だと思われます。

 現在薬化学教室では、具体的には次のようなコンセプトで研究を展開しています。

 生体系の何を標的にするのか: 現在の標的の一つはビタミンD受容体です。1)本受容体のアゴニストである活性型ビタミンD3の化学構造の特徴を理解する、2)生理活性を高め、作用を分離し得る化合物を論理的に分子設計する、3)設計した分子を効率的に合成する、がポイントになります。時には新しい反応を考案し、あるいは目的に合うように反応を改良し、化学反応を巧みに組み合わせて目的化合物を合成します。我々が世界に先駆けて行った活性型ビタミンD3のA環部の系統的な化学修飾は、骨粗鬆症薬、あるいは乳癌、前立腺癌に対する制癌剤としての可能性が注目されています。

 どのように生理活性が発現するのか: 活性型ビタミンD3の作用発現は、ビタミンD受容体に結合し、受容体の三次元構造を変えるところからスタートします。その後の標的遺伝子発現までには、遺伝子上でリガンド−ビタミンD受容体を核とする巨大タンパク複合体形成までのプロセスがあります。そこには未知の部分も多く含まれていますが、我々の研究はこの作用メカニズムに基づき、ビタミンD受容体に対するアンタゴニストの探索研究も行っています。この研究ではパジェット骨病治療薬を目指しています。また、正常なビタミンD受容体を遺伝的に持ち合わせない、くる病(II型)の要因となる変異受容体に対しても作用するリガンドを研究しています。

 DNA結合性タンパク質と核酸との相互作用の解析: 基礎的な研究として、遺伝子組み換えタンパク質であるRecAがDNAをどのように認識し、機能しているのかを研究しています。

 以上、薬化学教室では有機化学・有機合成化学・生物有機化学の力を総動員して、教育と研究指導にあたっています。特に教育は、医薬品・生体成分の有機化学的な理解を目標としています。皆さんの若い力に期待しています。


教職員
教授
橘 敦史
講師
野 真史
助教 川越 文裕
研究員・大学院生
研究員
塩原 寛明
研究員
中村 哲也
博士研究員 本谷 小佑里